| 海馬
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帰るたびアルツハイマーひからびた母の海馬と僕は綱引き ちり紙を見つけて母はからからと何の笑いか暑い夕暮れ 両脇の青の勢いどこまでも眩いばかり夏はそれだけ 疲れ果て寝入った母のつかのまの隙間をみつけて飲む発泡酒 たたかいの後の静寂なにかしら重いけだるいカキ氷のむ ちり紙を母はポケツに入れたまま洗濯槽には白い卯の花 お盆には生きてる母を迎えますおはぎと餅で済ます供養の 不意に起き確かめている戦死した夢のなかにも兄さんのこと 「ああ醤油」煮しめをつくる夢見たか母の寝言の先にあるもの 白和えはところところに散らばってそれでも愉しい母との夕餉
アルツハイマーの母を週に一度、施設へ迎えに行っています。今では、このときが唯一のつながりの時間となっています。 |
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