雪の便箋
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煩悩の形つくりし吹き溜まり寒さに晒し洗ってしまへ


雪融かす密かな温もりこの指の触れしあたりの濡れているのを


照らされて柔き淵より融けし雪われの深部に染み込むやうに


いたづらに雪にさはれば温もりの皺だけ凍みる紅き両手に


日常のあまたのならひ埋め尽くすましろき雪はたのもしきかな


はじめてのましろき雪の便箋にあしあとふたつつけて愉しむ ※


※[2002NHK短歌入選歌]


© 大畑靖夫

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